特定の政策分野に強く、かつ特定の業界の利益を代弁する議員。新薬の認可や保険診療問題に影響力をもち、製薬会社や医師会との太いパイプをもつのが「厚生族」と呼ばれるほか、「道路族」「建設族」「運輸族」「農林族」「郵政族」「商工族」「文教族」「国防族」などもある。通常、族議員といわれる実力を備えるには大臣、副大臣、自由民主党(自民党)政調部会長、衆(参)院委員長を歴任する必要がある。しかし、こうした族議員の弊害を指摘する声も強く、1989年の自民党政治改革大綱では、部会や調査会の人事の固定化に歯止めを設けるよう提言した。93年の細川政権誕生で自民党が野党になったときには族議員の活動も衰えたが、94年の政権復帰により再び族議員の活動が活発化。2001年4月発足した小泉純一郎政権は「聖域なき構造改革」を掲げ、官僚や族議員の既得権益にメスを入れる姿勢を打ち出した。これに対し、既得権益を擁護するため、道路族や郵政族が激しく抵抗した。09年の政権交代によって族議員の状況は一変し、政権から転落した自民党の族議員は意味をなさなくなった。民主党では族議員化を防ぐ意味もあって党に政策審議会を置かず、地方からの陳情を一本化することとしたが、菅政権の誕生後は政策審議会が復活した。また議員連盟の形を借りて業界の利益を代弁するなど新たな族議員形成の動きも見え始めた。