内閣は国会に対して連帯責任を負う。そのために憲法は総理大臣に国務大臣を任意に罷免する権能を与えている(第68条2項)。しかし現行憲法下の例としては、(1)片山内閣の平野力三農相、(2)第4次吉田内閣の広川弘禅農相、(3)第3次中曽根内閣の藤尾正行文相、(4)第4期小泉内閣の島村宜伸農水相、(5)鳩山内閣の福島瑞穂特命相の罷免があるだけである。そのうち(1)は平野農相の戦争責任問題、(2)は広川農相の野党提出の首相懲罰動議採決欠席に対するもの、(3)は藤尾文相が韓国併合には韓国側にも責任がある趣旨の発言をしたため、(4)は島村農水相が郵政民営化法案の参議院否決に伴う衆議院解散に強く反対したため、(5)は連立政権を組む社民党の福島党首が鳩山内閣による沖縄の普天間飛行場の名護市辺野古移転決定に強く反対したためである。閣僚の「暴言・失言」の例は多いが、通常は、発言者自らの辞意表明という形で処理されている。宮沢内閣不信任案に船田元経企庁長官と中島衛科技庁長官が賛成票を投じるという前代未聞の事態に対しても罷免という手続きは踏まれず、両閣僚の辞表提出とその受理という形で責任問題は処理された。