議院内閣制下の内閣において、内閣総理大臣は「同輩者中の首席」(primus inter pares)であることが建前である。しかし、歴史的には、首相中心の機動的総合的な内閣の対応の必要性が高まり、それに並行して内閣における首相の地位も強化される傾向にある。強力な首相をもつ内閣制度は、イギリスでは首相内閣制、ドイツでは宰相民主政治などといわれている。日本でもこうした流れを受けて1986年7月には、内閣の総合調整機能強化のため内閣官房が再編成され、国の安全にかかわる事態に対処するために安全保障会議が設置された。さらに、96年6月には、内閣官房副長官の地位を高めるほか、必要に応じて内閣総理大臣補佐官を置くことができるよう、内閣法が改正された。そして、99年7月に成立した中央省庁等改革関連法により2001年1月から、(1)首相が内閣の重要政策の基本方針を閣議で発議する権限を明確にする、(2)内閣官房が予算編成や安全保障政策など、内閣の重要政策に関する基本方針を企画・立案する、(3)首相補佐官の定数の上限を引き上げるほか、総理大臣秘書官の定数を弾力化する、(4)内閣官房に内閣官房副長官補、内閣広報官、内閣情報官を置く、(5)内閣府を新設して、各省庁よりも上位に置き、各省庁の政策立案を総合調整する、など内閣とその補佐機能強化が図られた。