大規模な人権侵害や戦乱などによって多数の住民が悲惨な状況に陥っているにもかかわらず、領域国の政府が適切な措置をとる意思や能力をもたないために放置されているような場合には、国際社会が人道的観点から介入して住民に救済の手を差し延べる責任があるという考え方。通常の国際関係においては、領域国の了解なしにこのような介入をすることは主権侵害に当たり、認められない。しかし、領域国政府が無能ないし無力であるような場合には、非人道的状況から住民を救うために、国際連合(国連 UN)の安全保障理事会(安保理)の承認を得て、場合によっては軍事力を行使してでも、介入すべきであるという新しい方針である。この考え方は、2001年の「介入と国家主権に関する委員会」の報告書で最初に問題提起され、04年の「国連事務総長ハイレベル・パネル」報告書、05年のアナン国連事務総長報告書、同年の世界サミット成果文書などによって支持され、同年10月の国連総会決議によって公式に承認された。