2015年11月のミャンマー総選挙で圧勝した国民民主連盟(NLD)が多数派となった連邦議会は16年3月30日、アウンサンスーチー党首(→「民主化運動(ミャンマー)」)の側近ティンチョーを大統領に選出した。外国人と結婚していたスーチー党首は、憲法の規定で大統領になれない代わりに、外相、大統領府付大臣、教育相、電力・エネルギー相の4ポストを兼任した。21人の閣僚のうち国軍最高司令官が任命する内務、国防、国境大臣を除いた18人が民選議員で、NLD以外にも退役軍人やモン民族党員を含めて国民和解を印象付けた。新政権は4月に軍人議員の反対を押し切って政権ナンバー2の国家顧問を創設し、スーチーが就任した。新政権は政治犯を釈放し、弾圧に使われた国家防衛法、緊急事態法などを撤廃。また、抵抗を続けるモン族、カレン族、カレンニー族などの少数民族との和解を最優先として8月に少数民族武装勢力との和平会議を開催した。だが、西部ラカイン州で同年8月25日、イスラム教徒のロヒンギャ族の武装勢力が警察や軍施設などおよそ30カ所を襲撃。これに対し国軍が大規模な掃討作戦で報復、民間人の殺害、放火、レイプなどが横行し、17年末までに60万人を超えるロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに避難した(→「ロヒンギャ難民危機」)。だが、ミャンマー政府はこれを人道問題と認めず、スーチー国家顧問も沈黙を続けたため、国際的な非難を浴びた。なお、ティンチョーは18年3月21日、健康上の理由で大統領を辞任。同月28日、議会はウィンミン前下院議長を新たな大統領に選出した。