2015年7月20日に実現した、キューバとアメリカの国交の回復。両国の国交断絶は1961年1月3日に遡る。59年、フィデル・カストロを最高指導者とするキューバ革命によってバティスタ親米独裁政権が崩壊し、キューバ革命政権が樹立された。この革命政権が旧ソビエト連邦に接近したことが直接的な契機となって、アメリカはキューバに国交断絶を通告。さらに亡命キューバ人部隊を用いて政権転覆を試み(ピッグス湾事件)、経済封鎖を実施した。キューバはアメリカに対し、長年経済封鎖の解除を求めてきたが、ソビエト連邦崩壊後の90年代になってもヘルムズ・バートン法などによって経済制裁はいっそう厳格化された。しかし、アメリカでバラク・オバマ政権が発足すると、半世紀以上にわたる対キューバ孤立政策は失敗との認識から、2009年にキューバへの送金や渡航の要件が緩和された。その後、ローマ教皇フランシスコやカナダの仲介もあり、両国政府は正式に国交正常化に向けた交渉を開始。15年4月にパナマで開催された「米州サミット」では、59年ぶりに両国首脳による公式会談が実現した。同年5月末には、アメリカ国務省がキューバのテロ支援国家指定を解除し、7月20日、両国の大使館が再開して国交正常化に至る。16年3月には、オバマ大統領がキューバを公式訪問した。一方、16年11月にフィデル・カストロが死去した後も、キューバでは社会主義体制が続いており、アメリカの経済制裁の解除をはじめ大きな課題も残る。また、17年1月にアメリカで発足したドナルド・トランプ政権の下で新たな関係がどう展開するのか、今後の動向が注目されている。