2014年9月4~5日にイギリス、ウェールズで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳レベル会合。ウェールズ首脳会議宣言を発表した。同宣言ではウクライナ危機と中東での過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭をふまえて、NATOの集団防衛機能の再強化を確認した。冷戦後、集団防衛機能を後景においてきたNATOが初の軌道修正を行ったことになる。具体策として、即応性行動計画(NATO Readiness Action Plan)を採択した。これは二つの要素からなり、その一つは、ポーランドやバルト諸国のような東部加盟国に対する「安全保障の確認」である。同地域へのNATO軍司令部の常設、装備の集積、部隊の派遣、演習の実施が想定されている。ただし、ウクライナの軍事的防衛は意図されていない。したがって武器供与もしない。もう一つは、新たな事態への「適応策」で、NATO即応部隊(NRF)の大幅強化である。具体的には即応部隊内に、極めて迅速に配備可能な初動対処部隊(Very High Readiness Joint Task Force )を創設する。また、集団防衛力強化のために、これまで続いてきた各加盟国の軍事費の低落傾向に歯止めをかけることも合意された。「イスラム国」に対しては国際的アプローチが必要なことが確認され、NATOもアメリカ主導の有志連合に協力していくことになった。アフガニスタンについては14年12月に国際治安支援部隊(ISAF)の任務が終了するが、その後も継続される同国への支援が「アフガニスタンに関する宣言」にうたわれた。