2016年6月、イギリスのEU離脱(Brexit)を選択した国民投票(→「イギリスの嫌欧ムード」)結果の責任を取って辞任したキャメロン政権の後継。テリーザ・メイは公立進学校のグラマースクールを経てオックスフォード大学を卒業。早くに政治家を志すが、イングランド銀行でキャリアを開始し、1997年、41歳で下院議員となる。キャメロン政権では一貫して内務大臣を務めた。キャメロン辞任後、保守党党首選挙で候補者が次々と辞退したため、最後に残った彼女が2016年7月、第76代首相に就任した。EU離脱の是非を問う国民投票ではEU残留派に属してはいたが、基本的にはEU懐疑主義者と言われる。当面の課題はBrexit(ブレグジット)に際し、EUとの関係を再構築すること。イギリスが望むのは、「移民規制」と「EU単一市場へのアクセス確保」の両立をEUに飲ませる「ソフトブレグジット(穏健離脱)」だが、EU側は「いいとこ取り」は許せないと主張する。メイ首相は17年1月17日の演説で、移民規制を優先し、EU単一市場撤退も辞さないとする「ハードブレグジット(強硬離脱)」の方針を表明したが、これに対し最高裁は、最終的な離脱案は、議会の承認を求めるとした。今後は、リスボン条約(EU基本条約)第50条で決められている「離脱通告」(17年3月に予定)後、2年以内に離脱協定を結ばねばならない。しかし、2年後、協定が成立しなくても離脱は決まることになるが、他方、EUと新たに結び直す貿易協定が同時に締結されるとも限らない。議会の承認も含めてEUとの交渉は前途多難であり、閣内には不協和音が響いている。