生命の豊かさを包括的に示す概念で、生態系・種・遺伝子的多様性の3階層で捉えられる。生物多様性の保全とその持続的利用、生物の遺伝子資源から得られる利益の公平な利用などを目的とした生物多様性条約が1992年に採択され、93年12月に発効。締約国は、(1)生物多様性国家戦略の策定、(2)重要地域の選定とモニタリング、(3)保護地域の指定と管理などの保全策を講じること、とされている。日本は1995年10月に生物多様性国家戦略を策定。2010年10月に予定される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、名古屋での開催が決定している。00年1月にはバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書が採択された。04年の生物多様性条約締約国会議では、2010年までに現在の生物多様性の減少率を大幅に減少させることを決めたが、実際には減少速度が加速している。関連して、ラムサール条約およびワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)がある。地球上の生物種総数は、国連環境計画の推定によれば300万~1100万種に及ぶが、確認されているのは約175万種程度。国際自然保護連合(IUCN)の絶滅の恐れのある動物の種名リスト(レッドリスト)では、世界中で5000種以上の動物が絶滅の恐れがある。国連レベルでは、地球生態系の科学的な評価を行うため、01年6月からミレニアム生態系評価計画(ミレニアム・エコシステム・アセスメント)が実施され、05年に報告書が発表された。この報告書では24の基本的な生態系サービス(淡水、漁業、水と大気の浄化など)を評価した結果、その60%以上が劣化しているとした。08年5月には、開発計画の初期段階で行う「戦略的環境アセスメント」(→「環境アセスメント」)等を盛り込んだ、生物多様性基本法が成立している。