人口の長期的な変化を説明する理論で、人口の均衡を保つ多産多死の状態から、同じく均衡を保つ少産少死の状態へと変化する過程をいう。多産から少産への変化は出生力転換、多死から少死への変化は死亡力転換という。死亡率の低下が出生率の低下に先行する、つまり両者のタイムラグが生じることにより、一時的に自然増加率の上昇が起こり人口が増加する。またこの過程を経て高齢化する。先進国の産業革命後の人口増加とその後の人口停滞、あるいは人口爆発と称される第二次世界大戦後の開発途上国の急速な人口増加とその持続については、この理論によって的確に説明することができる。先進国の場合、社会や経済の発展が死亡率の低下をもたらし、続いて、都市化、教育水準の向上、女性の社会進出などの影響により出生率の低下をもたらした。途上国の場合、先進国からの医療技術の導入により死亡率は急速に低下したものの、社会や経済の発展が不十分なため出生率の低下が遅れている。なお、古典的な人口転換理論では、人口転換の完了後(ポスト人口転換期)に、人口は再び均衡を取り戻すと考えられていた。しかし、日本では、少子化の定着により、人口が際限のない減少へ向かうという想定外の事態が起こっている。人口の将来を予測する上でも、人口転換理論の再検討が課題となっている。