「民法」は、明治時代の1896年に公布された契約の基本ルールを定めた法律。今回、制定当時の経済社会状況と大きく変わった債権法の部分について、法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会で改正作業が進められ、2015年2月に要綱案が決定した。法務省は同年3月に改正案を国会に提出する予定。今回の改正は制定以来の歴史的な大改正となり、現代社会に対応して、消費者保護の視点が取り入れられたのが大きな特徴となっている。(1)制定当時は存在しなかった、消費者と事業者が契約を結ぶ際の「約款」について新たに規定が設けられる。約款はあらかじめ事業者が事前に定めた契約の条項だが、場合によって事業者は一方的に消費者の承認なく約款を変更できるという条項が盛り込まれていることがある。これを利用して、ゴルフ会員権の預託金の返還金額や返還時期を一方的に変更したり、結婚情報サービスで一方的に会費を増額、紹介する人数を減らしたりするというトラブルが発生している。今回の改正では、事業者側が一方的に約款の条項を変更することは禁止されることになった。また、約款の中に、消費者に著しく不利益な条項が盛り込まれていた場合には、これを取り消すことができるように改正される。現在の「消費者契約法」には、消費者契約の条項の無効についての規定がある。(2)判断力が衰えた高齢者などが締結した契約は、無効にできるようになる。現行法では、「消費者基本法」に事業者の責務として、消費者との取引に際しては、消費者の知識、経験、財産の状況等に配慮することと規定されている。この規定は、高齢者や社会的弱者に対しては、特に十分な配慮が必要という意味を含んでいる。(3)消費者が契約する商品について正確に理解していなかった場合には、契約を取り消すことができることになっている。現行法では、「」と「特定商取引法」(→「改正特定商取引法/改正割賦販売法」)に不実告知(うそ)により締結した場合は取り消すことができる規定がある。(4)消費者は、欠陥商品を購入した場合、修理や交換、減額を請求できることとなった。現行法では、「製造物責任法」で製造業者の損害賠償について規定されている。