2012年にサウジアラビアで突然出現した、コロナウイルスによる重症呼吸器感染症。このウイルスの陽性患者は、発熱、せき、そして呼吸困難を訴え、致死率は50%に達するので、新たな病原体の出現として恐れられている。クウェートやカタールなどのサウジアラビア周辺諸国をはじめ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツなどにおいても中東への渡航経験者の中に感染者が見つかり、感染が拡大している。ヒトからヒトへの感染はまれであり、感染者は50~60歳代以上の成人男子であることが多い。14年1月までに178人の症例があり、うち75人が死亡している。原因病原体は、03年に香港で出現し、東アジア諸国で約800人の死者を出したSARSコロナウイルスにきわめて似ているウイルスであるので、MERSコロナウイルスと命名された。治療薬(→「抗ウイルス剤」)やワクチンなどはない。