漢方薬の安定供給に向け、生薬を国内で生産する取り組み。高齢化が進む日本では、公的医療保険の適用認可も後押しして、漢方薬の消費量が年々増加している。その一方で、80%以上を輸入に頼る原材料の生薬については、最大の生産国である中国国内における需要増加、人件費や栽培加工費の上昇、投機バブルなどで価格が高騰していることから、国内自給の拡大が望まれ始めた。現在、日本では当帰(とうき)、川キュウ(せんきゅう)、黄耆(おうぎ)、附子(ぶし)、大黄(だいおう)、朝鮮人参(ちょうせんにんじん)、芍薬(しゃくやく)といった生薬が、北海道、福島県、長野県、奈良県などで栽培されている。栽培が難しい甘草(かんぞう)も、国内の製薬会社が栽培技術を確立させたり、ベンチャー企業が人工栽培の実用化に成功するなど、研究開発が進められている。しかし全体的には、農業従事者の高齢化や後継者不足による減産に加え、国の政策で薬価が低く抑えられていることが拍車をかけ、生産は伸び悩んでいるのが実情である。そのため、生薬の安定供給には、後継者問題や生薬薬価基準の見直しなどを含め、国産生薬栽培が成り立つような国内農業の総合的な政策が必要とされる。