頭痛には脳腫瘍、くも膜下出血、緑内障など器質的疾患による症候性頭痛と、それ以外の機能的頭痛とがあるが、漢方治療が適応となるのは後者である。とくに片頭痛や緊張型頭痛、高血圧由来の頭痛などにも使われる。片頭痛は、脈拍に一致する拍動性の頭痛で、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)や五苓散(ごれいさん)などの有効性が報告されている。緊張型頭痛は、しばしば肩や首の凝りをともない、葛根湯(かっこんとう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)などが頻用される。高血圧に起因する頭痛には、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、釣藤散(ちょうとうさん)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)などが使用される。また、漢方医学の病態把握法である気血水(きけつすい)によれば、頭痛以外の症状や体質も勘案して処方することが大切である。たとえば、のぼせ、動悸(どうき)、不安感など気(き)の異常による頭痛には、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、香蘇散(こうそさん)などが有効である。冷えや月経に関連した頭痛は血(けつ)の異常と考えられ、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などを用いる。二日酔いの頭痛は水(すい)の異常による典型例で、浮腫、めまい、嘔吐(おうと)・悪心などの症状をともないやすい。この場合は、五苓散、真武湯(しんぶとう)などが使用される。