がんの化学療法では、治療自体は有効でも、薬物などの副作用が患者に負担をかけて継続が困難になることがある。そこで治療を継続させ、効果を高めるため、漢方薬による副作用の軽減が重要となっている。具体的には、がん化学療法による食欲不振、悪心・嘔吐(おうと)に対し、胃排出促進作用など消化管運動機能を改善する六君子湯(りっくんしとう)などが用いられている。また、消化器系などのがん治療に使用される、塩酸イリノテカン(CPT-11)による遅発性の下痢は、通常の止痢剤や整腸剤ではコントロールが困難なことがあり、漢方薬の半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が頻用される。半夏瀉心湯は半夏(はんげ)、黄連(おうれん)、黄ゴン(おうごん)、朝鮮人参(ちょうせんにんじん)、大棗(たいそう)、乾姜(かんきょう)、甘草(かんぞう)で構成され、薬理学的には黄ゴンの主成分であるバイカリンなどが、CPT-11の有効性を損なわずに下痢の改善に効果があると報告されている。