社会生活の中で生じるストレスは、心身に影響を与える。抑うつ傾向、意欲低下、いらいらなどの精神症状だけでなく、食欲不振、不眠、倦怠、便通異常などの身体症状も現れる。漢方医学には心身一如(しんしんいちにょ)という言葉があり、心と体は切り離せないと考える。そのため漢方治療では、心の疲れにともなう身体症状にも着目する。例えば抑うつ傾向で、不眠、のどのつまり感や、息が吸いにくいなどの症状がある場合には、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が用いられる。胃腸が弱い人には、香蘇散(こうそさん)なども使用される。また、抗ストレス作用がある、柴胡(さいこ)が含まれる漢方薬も頻用される。比較的体力がある場合、便秘がちの人には、大柴胡湯(だいさいことう)、動悸が著しい人には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが選択される。一方、胃腸が弱い人場合には、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)や柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)など、各自の体質や症状に応じて処方される。