医学的には、排便回数や量が通常より著しく減少したことによって、腹部不快感などの苦痛を訴えた状態をさす。大腸がんなどに起因する器質的閉塞でない便秘については、漢方治療の適応となる。その場合、便の頻度や性状(硬い、軟らかいなど)、排便時の腹痛の有無や随伴症状(お腹の張り、排ガスの有無)などを考慮する。さらに漢方では、便秘にともなう症状や体質なども、治療上大切な情報としている。便秘以外に愁訴がない場合は、大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)を使用する。大黄は、瀉下(しゃげ)作用のあるセンノサイドを主成分とする生薬であるが、甘草と一緒に配合することで、長期使用による効果の減弱を予防している。腹痛をともなうことが多い場合には、大黄甘草湯に芍薬(しゃくやく)や桂枝(けいし)など、痛みに有効な生薬を追加した桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)などが用いられる。さらに、コロコロした兎糞(とふん)様の便である場合には、便を軟らかくする効果のある麻子仁(ましに)、地黄(じおう)などの生薬を含む麻子仁丸(ましにがん)や、潤腸湯(じゅんちょうとう)などが用いられる。