風邪は、主にウイルスによって引き起こされる呼吸器の病気。漢方医学では病気の原因を邪(じゃ)といい、「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「熱」の天候も邪の一つと考える。風邪は「風」の邪によって引き起こされる、寒気や発熱などの症状を伴う病気である。風邪の治療は、初期、中期、後期に分けて対応する。初期にはのどの痛み、悪寒、頭痛、首筋のこわばりなどの症状がみられる。一般的に風邪薬として広く知られている葛根湯(かっこんとう)は、胃腸が丈夫で、体力がある人の初期の風邪に用いられる。したがって胃腸が弱っている人や、体力のない高齢者が服用すると、食欲低下や胃もたれなどを引き起こす場合がある。そうした人には、桂枝湯(けいしとう)や香蘇散(こうそさん)などが使用される。さらに漢方的治療では、薬の効果を最大限に発揮させるため養生も大切となる。中国の後漢時代に書かれた『傷寒論(しょうかんろん)』には、桂枝湯などを用いる際は服用後に少量の粥(かゆ)をとらせ、布団をかけて少し汗をかかせるように、との指示がある。生もの、冷たいもの、辛味、酒、肉などを控えるように、とも記されている。