免疫とは、体内へ侵入したウイルスや病原菌から、生体を守る自己防衛機能のことである。漢方医学では、免疫力は生命活動をつかさどる気(き)(→「気血水」)の働きの一つ、と考えられている。そもそも漢方の治療は「心身のゆがみを調整し、自然に治る力を高める」ことを目的としているため、おのずと免疫力アップが期待される。気が減ると、疲れやすいだけでなく、免疫力が低下してかぜをひいたり、がんなどの病気も発症しやすくなる。そのため、朝鮮人参や黄耆(おうぎ)など、気を補う生薬を含む補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などを用いる。これらの漢方薬には、実際に免疫力が向上した、という研究報告もある。また、日々の気は胃腸で作られるので、健胃整腸も免疫力アップにつながる。食事は腹八分目に努めて、胃腸に負担をかけないことが重要。ストレスなどで気のめぐりを悪くすることも、免疫力のバランスを崩すもとになる。花粉症などのアレルギー疾患や、膠原病などの自己免疫疾患は、免疫力のバランスの崩れが原因である。抗ストレスや免疫調整作用のある柴胡(さいこ)を含む、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)や四逆散(しぎゃくさん)などを、体質や症状に応じて処方する。さらに免疫力は、37度前後の深部体温で活発になる。したがって冷え症の人は、ネギやショウガなどを食べて、体を温めることが大切である。