軽水炉の一種で、一次冷却水(primary coolant water)は沸騰させずに、熱交換器(蒸気発生器 steam generator)を通して二次冷却水(secondary coolant water)に熱を伝え、二次冷却水が沸騰してタービンを回す。タービン系統の放射能汚染を防げる利点があるが、システムは複雑になる。特に蒸気発生器は放射能に対しては閉じ込め、熱に対しては伝達という相矛盾した役割が求められ、弱点となっている。アメリカのウエスチングハウス(WH)社が原子力潜水艦用に開発した原子炉で、日本では三菱重工が製造、関西、北海道、四国、九州電力が使用。時代とともに大型化され、長サイクル運転による経済性向上も目指してスペクトルシフト(spectrum shift)と呼ばれる炉心設計を採用した改良型加圧水型炉(APWR)が登場。153万4000kWの敦賀原発3、4号機は計画が次々と延期された末、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故を受け、建設の見通しを失った。同じく、159万kWの川内3号炉も19年度に運転開始を目指してきたが、これもまた建設の見通しは見えない。日本では、三菱重工がWH社と組んで開発してきたが、従来はアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社と組んで沸騰水型炉(BWR)を作っていた東芝が、06年2月にWH社を買収した。WH社を奪われた三菱はヨーロッパのPWRメーカーであるアレバと06年10月に事業提携契約を結んだ。その事業体は、現在アトメア1(ATMEA 1)と呼ばれる型のPWRをトルコに輸出するための優先交渉権を得た。しかし、アレバは経営困難に陥り、三菱もアメリカのサンオノフレ原発に輸出した蒸気発生器が欠陥品だとして、9300億円の損害賠償訴訟を起こされるなど苦境が続き、実現できるかどうか見通しが立たない。