原子力発電所で事故が起き、放射性物質が環境に放出されれば、それは大気中、あるいは海洋などを拡散しながら移動する。特に事故直後の住民の被曝は大気中に放出された放射性物質によって生じる。そのため、大気中に放出された放射性物質がどのように拡散するかを知ることは重要である。実際に事故が起きた時に、その時の大気条件と地形条件を入力して、時々刻々、放射性物質の拡散を計算するのがSPEEDI(スピーディ)である。しかし、事故が起きる前の防災計画を立てるためにも、予測計算をすることは大切であり、その場合、それぞれの原子力発電所での年間の気象条件の発生頻度を入力して、放射性物質の拡散予測計算をする。原子力規制委員会は、2012年10月に、国内の16カ所にある原子力発電所について、予測計算結果を発表した。「放射性物質の拡散シミュレーション」などと呼ばれたその予測によると、柏崎刈羽、浜岡、大飯、福島第二の4カ所では、原子力災害対策指針(改訂原案)で「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ ; Urgent Protective action planning Zone)」とされた原発から半径30km圏を超えた場所でも、1週間の積算線量が100mSv(ミリシーベルト)を超える結果となった。ただし、原子力規制委員会が行った計算は地形を考慮に入れていないし、実際の事故の場合には、気象条件が関係するため、予測計算を上回る場合も下回る場合も生じる。