日本の小型衛星打ち上げ用ロケット。イプシロン(epsilon)はギリシャ語で5番目の文字の「E」。M-5ロケット(M-Vロケット)の運用終了にともなって、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、2006年度からは科学衛星の打ち上げと、日本の固体ロケット技術の維持発展を目的とした、より小型低コストの固体ロケットの検討を開始。07年8月に、3段式で、地球低軌道に1.2トンの衛星を打ち上げる能力を持つロケットの概要が固まった。第1段にはH-2Aロケットの固体ロケット・ブースター(SRB-A)を流用し、その上にM-5ロケットの第3段と第4段を改良したものをつないで3段としたもので、打ち上げコストを30億円以下に抑える。11年度から始まった開発は、早期打ち上げと開発リスクを低減するために、開発は既存技術を最大限活用した仕様の「EX」を先行させ、次いで発展型である「E1」を開発するという2段階方式を採用した。「EX」はH-2Aロケットの制御系などを流用し、13年9月14日に初号機を内之浦宇宙空間観測所から打ち上げた。打ち上げコストは38億円。16年12月20日には、打ち上げ能力を1.3倍に増強した「EX」相当の2号機の打ち上げにも成功した。今後は、新規開発のH3ロケットと部品を共有する「シナジー・イプシロン」の開発へと進み、最終的には2020年ごろ、国際商業打ち上げ市場へ参入可能なコストと能力を持つロケットとして完成させるという構想となっている。