人間が火星に赴いて行う探査のこと。有人月探査に続く次の有人宇宙探査として長年検討されているが、巨額の費用がかかるためにいまだ実現していない。1948年に、ロケット工学者のウェルナー・フォン・ブラウンが世界初の具体的な有人火星探査構想を発表している。フォン・ブラウンは、60年代後半から70年代にかけてアポロ計画の次のステップとしての有人火星探査実施を主張したが、アメリカ政府は財政難を理由に認めなかった。89年にはブッシュ政権のクエール副大統領がNASA(アメリカ航空宇宙局)に有人火星探査計画を作成させたが、総額4000億ドルの巨大予算が必要ということで立ち消えになった。旧ソ連とロシア、欧州でも80年代以降、2030年代を目標とした有人火星探査構想が検討された。10年代からは、国際宇宙ステーション(ISS)の次の大型国際協力としての有人・月火星探査の可能性を、各国閣僚級会合の国際宇宙探査フォーラム(ISEF)や、各国宇宙機関の集まりである国際宇宙探査協働グループ(ISECG)で検討している。また、アメリカのスペースX社は、もう一歩進んで火星に大人数が定住する火星植民を提唱しており、16年9月に、そのための巨大有人宇宙船構想「インタープラネタリー・トランスポート・システム」を発表した。