有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)という現象は、1960年代初頭にドイツで発見された。アントラセンの結晶に高い電圧を加え電子を注入すると発光するという現象で、当初の発光効率は0.01%程度以下と実用化にはほど遠かった。その後、日本とドイツを中心に「光る分子」の開発が精力的に進められたが、効率は高くならなかった。86年になって当時コダックの研究所に居たC.W.タン氏が、有機分子でp-n接合を作り、発光効率1%程度と飛躍的な高効率有機EL発光を実現した。しかし、発光させ始めるとすぐに輝度が劣化するという信頼性・寿命の問題に突き当たり、製品化はできなかった。97年になり、当時パイオニアの仲田仁氏が、劣化の原因が水と酸素であることを突き止め、原材料、デバイス作製工程、組立工程から徹底的に水と酸素を取り除くという技術を開発して、ついに現象発見から40年近く経って実用化に成功した。(→「有機EL素子」)
これにより、「紙のように薄いディスプレー」が開発され、液晶の次のディスプレーとして、またプリンテッド・エレクトロ二クス(プリンタブル・エレクトロニクス)、フレキシブル・エレクトロニクスを実現できるデバイスとして期待されている。すでに、スマートフォンや超薄型大型パネル(有機ELパネル、有機ELディスプレー)として用いられ始めており、液晶に比べて色が鮮やかで応答速度が速く、薄型軽量という特徴を持つ。