真空中に設けた電磁場により、1個または複数個のイオンを捕獲すること(ion trapping)、またその技術あるいは装置(ion trap)。通常は部屋の一角を占めるほどの装置となるが、小型化の研究も進んでいる。イオンのような荷電粒子は静電場や静磁場中に安定点がないため、捕獲には工夫が必要である。たとえば、回転または交代するような変動する電場を用いるポールトラップ(Paul trap)、静電場と静磁場を組み合わせたペニングトラップ(Penning trap)がある。捕獲場所を通り過ぎないようにイオンを減速させておく必要があり、中性原子の冷却と同様、レーザー冷却(laser cooling)が併用される。同種の正イオン同士あるいは負イオン同士は反発するため、中性原子と異なり整列状態で捕獲すること(結晶化)が容易である。きちんとトラップしたイオンは高周波電磁場との相互作用の精度が高いため、世界統一的な時間標準(周波数標準)に用いられる。制御性を問わなければ数十個のイオンのトラップができており、量子演算(→「量子情報」)のように制御性が要求される分野では、8個のイオンのエンタングルメントが確認されている。