被測定系と測定器の相互作用が弱く、測定針の触れが針自身の量子力学的不確定性を上回らないような、分解能の不十分な量子測定(→「量子観測」)。一般に量子測定はその反作用により被測定系の不確定性を増大させるが、弱い測定の場合はそれが少ない(→「不確定関係」)。極限的に弱い測定は極限的に反作用も小さいので、量子干渉を壊さないという逆説的な測定として、原理的存在価値がある。一方、実用的存在価値も研究されており、今後の成果が待たれる。概念自体は30年ほど前からあるが、準備した初期状態と異なる終状態を観測した場合の中間状態に対して弱い測定を行った場合が特に興味深い。中でも、ハーディのパラドックス(Hardy's paradox)と呼ばれる系でそれを行うと、普通なら「存在確率」と解釈されるある測定値が、「確率」である以上0か正の値をとるべきにもかかわらず負の値を示すことがY.アハラノフによって予言されていた。ハーディのパラドックスとは、ある粒子の干渉計とその反粒子の干渉計の経路の一部を交差させたとき、両粒子が交差点で出会うと消滅するはずなのに、あたかも通過したかのように出力することがあるというパラドックスのことをいう。粒子の経路は問わないことにすれば矛盾はないが、この現象の邪魔をしない弱い測定の理論を適用すれば経路を検証できる。最近、光子を用いた実証実験が行われ、測定値が「確率=-1」というパラドックス的な値が観測された。これは量子測定の意味について新たな問題提起を投げかけている。