量子測定の確率的側面を未知の要因「隠れた変数」に帰着させる理論(→「量子観測」)。隠れた変数が相対論を満たす、すなわち光の速度を超えて伝わることはないとするタイプの理論と相対論を満たさなくてもよいとするタイプがある。前者は「局所実在論に基づく隠れた変数の理論」または「局所隠れた変数の理論(local hidden variable theory)」とも呼ばれ、その理論によると、空間的に離れた場所での量子測定値の間のある種の相関値がベル不等式(Bell’s inequality)と呼ばれる不等式を満足しなければならないことが1965年にJ.S.ベルによって示された。その後いくつかの検証実験が行われ、ベル不等式が破れていることが示唆されたが、特に80年代初頭に行われたA.アスペの実験が決定的であった。現在も検証実験は続いているが、ほぼすべての量子物理学者は局所実在論に基づく隠れた変数の理論は否定されたと考えている。一方、後者、すなわち「非局所隠れた変数の理論(non-local hidden parameter theory)」の代表はD.ボームの量子ポテンシャル(quantum potential)理論であり、これは計算ツールとして通常の量子力学と同等であり、否定されていない。