二つの光子が関与する干渉現象。通常「干渉現象」というとヤングの干渉計、マッハツェンダーの干渉計、マイケルソンの干渉計といった、波としての光の干渉を考えるが、それとは大変異なる。たとえば、半透鏡(光を半分通し、半分反射する鏡)に対向して左右から一つずつ光子を打ち込んだとする。一つの光子は確率1/2で通過または反射するので、二つの光子が、
(1)両方とも鏡の左に行く確率は1/4
(2)両方とも右に行く確率は1/4
(3)一つずつ左右に別れる確率は、両方とも透過か両方とも反射だから1/2
と考えるのは古典的粒子の場合である。光子で実際に実験すると、上記の確率はそれぞれ
(1)は1/2
(2)は1/2
(3)は0
となる。すなわち、一つずつ左右に別れて進むことはない。この信じ難い現象は、「両方とも透過」と「両方とも反射」という区別のつかない二つの現象が量子力学では「互いに打ち消す干渉」を起こすからである。最初に実験した研究者の名を並べてホング・ウ・マンデル干渉(Hong-Ou-Mandel interference)あるいは単にマンデル干渉と呼ばれる。
この干渉は光子がボソン(ボース粒子〈スピン=自転に対応した自由度が整数値の素粒子〉)であることを反映しており、逆に電子などのフェルミオン(フェルミ粒子〈スピンが半整数値の素粒子〉)を使うと、上記の確率は、
(1)は0
(2)は0
(3)は1
となる。こうした現象は、フェルミオンの場合も含めて二粒子干渉(two-particle interferometry)と呼ばれる。
この現象は初期状態が「エンタングルしていない(量子力学的な相関をもっていない)」二つの光子だから起こるのであって、もし完全にエンタングルしているベル状態(Bell state 二つの粒子が量子力学的に相関している状態)が四つあり、その一つが「ψ-状態」と呼ばれる状態の場合は、フェルミオンと同じ現象を起こし、他の三つのベル状態に対してはボソンである光子と同じ1/2、1/2、0の現象が起こる(→「エンタングルメント」)。これを利用して、「ψ-か、それ以外の三つか」という測定ができる。もう少し複雑な配置をとると、四つのベル状態のうち二つとそれ以外を峻別する測定ができるので、量子テレポーテーションで必要なベル測定として用いられる。なお二光子干渉にはこれ以外にフランソン干渉(Franson interferometry)と呼ばれる干渉もある。