量子ニューラルコンピューティング(量子アニーリング、量子ゲートと並ぶ量子計算術のアプローチの一つ)に用いられるニューロンネットワーク。ただし、2017年頃から特に「QNNcloud」(体験ウェブアプリケーションが公開中)が研究開発・運用をしている縮退光パラメトリック発振器を用いたコヒーレントイジングマシンのことを指す文脈で使われることが多く、この場合は略して「QNN」と呼ばれる。一般用語としての量子ニューラルネットワークは、通常の「量子ではない」ニューラルネットワーク(神経回路網)の信号に複素数値を許したり、それから実数を抽出するプロセス、つまり観測による波動関数の確率的変化に相当する過程を含むように一般化したニューラルネットワークである。
一方、QNNcloudの量子ニューラルネットワーク(以下QNN)は、二次元イジングモデル(→「量子シミュレーター」)をネットワーク化するための自在な結線が事実上困難であることの解決法として、一次元ループを周回する光パルスから選択的に信号を得たあと、他のパルスに結合させる方法を用いたものである。つまり、周回方向を一次元、抜き出し結合させるためのタイミング制御、すなわち時間軸を二つ目の次元として、全体として二次元を達成するもので、空間的には一次元であるため良質の実装が可能となる。このQNNはいくつかの組み合わせ最適化問題に向いていると見込まれ、研究段階のデモンストレーションとして選ばれた最適化問題に対しては、スーパーコンピューター「京(けい)」より高速であることが示されている。純粋なパラメトリック発振器は発振閾値(しきいち)以下では位相0と180°の重ね合わせ状態(→「重ね合わせの原理」)にあり、発振にともない、どちらかが選ばれる。これが「量子」を冠する根拠である。現実験段階では「純粋状態」である重ね合わせ状態でなく、いったん確立された重ね合わせ状態が壊れて個々が独立に進行する「混合状態」であろうと考える専門家も多く、そのため「本当に量子か?」という議論もある。仮に、現在は混合状態だとしても、目指すところは重ね合わせ状態からの相転移であり、すなわち最終形態は「量子」の概念である。