生体の機能および形態を模倣し、工学的、あるいは医学的応用に展開しようとする技術、またはその試みをさし、バイオミミクリー(biomimicry)ともいう。進化の過程で環境に適応するよう最適化されてきた生体は、その機能とともにデザインにおいても特徴的な性質を有する。最も身近な例である、蜂の巣がみせる頑強なハニカム構造や、野生ゴボウの実がまとう鉤(かぎ)をヒントにした「マジックテープ(クラレの登録商標)」などに代表されるシンプルで模倣しやすい構造のものから、クモの糸のように7種類の糸を組み合わせることでしなやかさと高強度を併せもつような、まねすることが難しい構造のものまで、実に多くの生体模倣が応用されている。カタツムリの殻が汚れの付着を防ぐ表面構造をしていることを模倣した外壁やキッチンシステム。モルフォ蝶の鱗粉における縞状構造(棚構造)を模倣した構造色の服やフィルター、あるいはフォトニック結晶への利用。蚊の口の針構造を模倣したマイクロニードルによる無痛注射針(→「負担軽減医療」)。サメの肌がもつ、水中での摩擦抵抗を低減するリブレット構造(riblet structure 数十μ~数百μm〈マイクロメートル μは10-6=100万分の1〉レベルの周期的な溝構造)を模倣した水着、最近ではモス・アイ構造(蛾〈が〉の目の表面構造)を金型に利用し、光の反射を防ぐモス・アイ・レンズの作製を可能にするなど、非常にたくさんの構造が模倣され、応用されている。