電子の電荷やそのスピン(自転のようなもので、磁性の源。それぞれ反対の回転方向をアップスピン、ダウンスピンと呼ぶ)、さらには原子の核が有する核スピンを量子的に操作する研究が進展しているが、これらを相互に結合したり、これらと機械的振動や音波の粒子であるフォノン、テラヘルツから光通信波長帯に至るさまざまなエネルギーのフォトン(光子)を結び付けたりする試みが活発になっている。たとえば、力や磁気の極限測定を目指して、ピエゾ効果(piezo effect 加える力によって電荷が生じる圧電効果)をもつ材料で機械振動子を作成し、振動子の一部に量子ドット(電子が閉じ込められた構造)を埋め込むような複合量子系あるいはハイブリッド量子系(hybrid quantum systems)が作製されている。振動が作る歪(ひず)みを通して量子ドット内の電気特性が変調され、量子ドット内の電子状態と機械振動の結合が可能になる。電荷、スピン、クーパー対などの量子情報を機械振動を通してフォトンに変換(→「量子オプトメカニクス」)するほか、量子情報のフォノンを介しての結合も期待されている。また、さまざまな量子状態の変換を量子トランスデューサー(Quantum transducer)として利用することで、各種の高感度センサーへの応用も考えられている。