導関数f’(x), f”(x)など(多変数の場合は偏導関数)を含む式からf(x)を求める作業を「微分方程式を解く」という。I.ニュートンは万有引力の法則から積分を繰り返して、ケプラーの法則を導いた。これが微分方程式を解いた最初の例である。微分方程式は力学で大きな成果をあげ、「すべての現象は微分方程式に帰着できる」と言われた。しかし、万有引力に従って動く三つの天体の相互作用を扱う三体問題(three-body problem)で壁にぶつかり、力学系から位相幾何学の誕生へとつながる。
これに対し、H.ポアンカレは微分方程式を幾何学的にとらえ直した。つまり、微分方程式は空間の各点に連続的にベクトルを与えた状態と考えたのである。これをベクトル場(vector field)といい、微分方程式を解くことは、これらのベクトルを接線にもつ解曲線(solution curve)を描くことと考えるのである。解曲線を集めた曲面が解曲面(solution surface)で、この分類によりポアンカレは大きな成果をあげた。これが力学系(dynamical system)である。この曲面の分類が位相幾何学の本格的な誕生へとつながる。