弱ボゾン粒子(→「四つの基本的力」)が質量を獲得する南部理論のメカニズムを宇宙に適用すると、ビッグバン宇宙初期での温度の効果にともなって場の量子論(→「真空エネルギー」)の真空状態が相転移を起こしたという見方になる。現在の宇宙の状態を普遍的でなく、現実は「対称な世界」が「自発的に破れている」という見方になる。こうした現実の背後に理想的な状態を想定するものの見方は、プラトンの「イデア」などに通じる。たとえば、物質世界で認識されているゲージ場(→「ゲージ場理論」)による四つの力は宇宙初期では区別のない一つのものだったのが、低温になり真空の相転移が起こるにつれて一部のゲージ場が質量を得ることで、四つの力に分岐したとなる。「四つ」には根拠がなく「自発的に」こうなったのであり、必然性がなく、別なようになってもよかったのである。素粒子の力の法則も一つの歴史的現実に過ぎないという見方を招来する。