たんぱく質の構成要素であるアミノ酸をはじめ、医薬品、香料などの生理活性物質にはキラル、すなわち光学活性(optical active)なものが多い(→「光学異性体」)。通常の方法で合成すると形と形の混合物(ラセミ体)が得られるが、キラルな触媒を用いると、立体選択的に一方の異性体を不斉合成できる。ノーベル化学賞を受賞した野依良治教授(現、理化学研究所理事長)が開発したBINAP(バイナップ)はその種の触媒の好例である。最近、DNAを付着させた膜で光学分割する方法も開発された。一方、アキラルな(キラルでない)分子を操作して、不斉誘導を可能にするキラルリレー(chiral relay)も注目されている。