ローマ法王とは正しくは教皇、ローマ・カトリック教会の首長でバチカン市国の元首である。ラテン語では「Papa」。2005年4月、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は84年の生涯を閉じた。1920年にポーランドに生まれ(本名、カロル・ユゼフ・ボイティワ)、78年に264代法王に選出され、イタリア人以外の法王としては455年ぶりだった。在位26年、四半世紀を超えた。
在位期間の長さでは、聖ペテロに始まる歴代ローマ法王の中で5番目となる。104回の外国訪問で訪れた国は129カ国を数え、精力的にバチカン外交を展開し、世界の宗教指導者や政治家と会見するなど、従来のローマ法王のイメージを塗り替える行動的な法王として宗教的・政治的な影響力を発揮したとともに、東方正教会やイスラーム、ユダヤ教との対話と和解を訴えて融和政策を推進した。91年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争には反対を表明したが、アメリカ大統領には聞き入れられなかった。日本には1981年に訪れ、広島で軍縮・核兵器の廃絶をアピールするなど、平和外交に熱意をもって取り組んだ。他方、中絶や避妊、離婚、同性愛に対してはカトリックの教義から反対し、また聖職者の独身制改革や女性司祭の登用に対しては伝統を守る立場から譲らず、超保守的な姿勢を貫き通した。