グローバルな現代文化の世俗的・享楽的・科学主義的な傾向に対抗して、プロテスタントのキリスト教圏でも、イスラーム圏でも、聖典を教条的に信奉し、原点に復帰しようとする原理主義が起こっている。アメリカでは、旧約聖書「創世記」に基づいて天地万物を神が創造したとする説ではなく、神の名を直接出さずに、生物の誕生には何らかのインテリジェント・デザイン(知的計画=ID)があったとする説が広まっている。このID支持派は公教育で神の創造説を否定する進化論の教育に反対し、福音派=キリスト教右派として共和党の支持基盤にもなっている。離婚や中絶、同性愛の増大をキリスト教信仰を失った家庭生活の危機ととらえて、キリスト教の復興を唱える偏狭な原理主義の一変種である。ヨーロッパでの移住によるムスリム移民の増大は9.11以降、単純にイスラームとテロを結びつけて、ナショナリスティックな排外主義の運動となって表れ、イスラーム・フォビア(嫌悪・恐怖)が蔓延(まんえん)していった。その潮流の中で、大きな国際問題となったのがムハンマドの風刺画問題。特に2005年9月にデンマークの有力紙が掲載した風刺画は、さまざまな形でヨーロッパ各国にも波及。他宗教へのローカルな攻撃がマスメディアを通じてグローバル化していった一方で、ムスリムによる抗議・批判もインターネットを通じてグローバル化していった。