1960年代、既成の新劇に飽き足らない若者たちが、新しい演劇の創造をめざして様々な活動を始めた。従来の劇場の概念を超えた、ビルの地下、倉庫のような小規模の空間、仮設のテントや広場・街頭などに上演の場を求めたので、アングラ演劇(アンダーグラウンド演劇)、小劇場演劇などと総称された。リアリズムを基盤としたせりふ中心の新劇に対し、肉体や演技空間の持つ力を重視し、独自の才能を持つ主宰者を中心に緊密な集団を作り上げ、個性豊かな活動を展開した。唐十郎(からじゅうろう)の状況劇場(紅テント)、佐藤信(さとうまこと)の68/71黒色テント、鈴木忠志の早稲田小劇場、寺山修司の天井桟敷、串田和美(くしだかずよし)のオンシアター自由劇場、太田省吾(おおたしょうご)の転形劇場、清水邦夫・蜷川幸雄の現代人劇場などが代表的存在で、これに続く世代に、つかこうへいや、野田秀樹、鴻上尚史(こうかみしょうじ)などがいる。これらの活動により日本演劇はさらに多様化が進み、80年代以降こうした劇団の多くが発展的解消を遂げた後も、小劇場演劇から生まれた多くの俳優・演出家・劇作家が第一線で活躍を続けている。アマチュアの小集団の中で才能を磨き、技術を向上させることによってプロの演劇人となる道が確立されたことの意味も大きい。21世紀に入っても、無数の小劇団が演劇的創造の胚芽となる傾向は続き、商業演劇への人材や発想の供給源になっている面もある。