2009年8月、東京の6つの現代美術のギャラリーが連動して「ARCHITECT TOKYO 2009」展を開催し、同時に表参道のGYREでも「ARCHITECT JAPAN 2009」展が企画された。いずれも公共の美術館ではない。民間のギャラリーがこうした企画を同時多発的に実施したことは過去に例がないだろう。例えば、小山登美夫ギャラリーは、鈴木布美子のキュレーションにより、師弟関係にある菊竹清訓、伊東豊雄、SANAAの模型やドローイングを展示し、戦後のアバンギャルドの系譜をたどる。日本の現代建築は世界的に高い評価を得ているが、国内ではそのドキュメントを収集・保存する専門的な建築博物館がない。その結果、かつての浮世絵のように貴重な資料が海外に流出しており、建築もコレクションの対象とするポンピドーセンターなどに購入されている。したがって、作品の売買を行う美術のギャラリーによる建築展は、こうした状況に対する問題提起としても注目された。