日本の近代建築史やイギリスの建築史を専門としながら、「建築は兵士ではない」(1980年)などの著作では、舌鋒鋭く現代建築の批評を行い、また一方で近代建築の保存に尽力した建築史家(1945~2014)。東京大学教授、ドコモモ・ジャパンの代表、博物館明治村の館長などを務めた。「建築の世紀末」(1977年)では、近世の建築の再読を通じて細部の豊かさやあるいは装飾の復権を唱え、「東京の地霊」(90年)では、土地の歴史を調べながら「地霊(ゲニウス・ロキ)」の概念を掲げ、場所性の問題を提起した。いずれも近代建築が失ったものであり、新しさを求めて消費する前衛主義に批判的な立場をとる。書斎にこもる研究者ではなく、東京駅舎修復工事の監修、国立近現代建築資料館の創設、新国立競技場デザインコンペの審査員、東京大学工学部建築学科への安藤忠雄の招聘(しょうへい)など、現場でのアクティブな活動によって建築界に影響を与えた。