効率化とコスト削減を徹底的に行い、低価格運賃を実現する航空会社。普及に伴い従来型のフルサービスの航空会社は、「レガシーキャリア(legacy carrier)」や「フルサービスキャリア(full-service carrier ; FSC)」と呼ぶようになっている。2000年代前半、海外では急速に成長したが、日本では、オーストラリア・カンタス航空グループのジェットスター航空が、07年3月関西国際空港に初めて就航した。その後エアプサンや済州航空(いずれも韓国)、春秋航空(中国)、エアアジア(マレーシア)などの海外LCCが続々と参入したが、全日空(ANA)と香港の投資会社が提携したピーチ・アビエーション、全日空とエアアジアが提携したエアアジア・ジャパン(13年11月に提携解消、ANA単独でバニラエアに変更)、日本航空(JAL)と三菱商事、ジェットスターが提携したジェットスタージャパンが相次いで就航した12年を「LCC元年」と呼んでいる。ビジネスモデルの特徴は、路線面では、自転車の車輪のようにハブ空港を中心として近隣空港にスポーク状の路線を展開する「ハブ・アンド・スポーク(hub-and-spoke)」方式を導入せず、単一両路線もしくは複数の路線を単純往復で運航。機材面では、単一機材か派生型の機材を一括購入することで、機材購入コストの削減とパイロットの操縦資格や整備の共通化を図り、メンテナンスと乗員訓練のコストを削減する。また、運航面では、ターミナルビルに直接接続できるボーディングブリッジの不使用や、整備の外注、機内外のサービスの簡素化(例えばエコノミークラスへの統一、座席指定の廃止、機内誌の廃止など)、航空券販売コストの削減(インターネット予約限定、紙の代わりに航空会社のデータベースに情報を記録するeチケットの活用、座席指定不可など)などがある。また、片道で安く購入できるという利便性もある。レガシーキャリアの「格安航空券」や個人用正規割引往復航空券(PEX航空券)は、大部分が往復設定だ(→「航空運賃」)。さらに、デスティネーション(目的地)が複数の旅行に便利である。飛行機と宿だけの安価なスケルトン型パッケージツアーは、単一デスティネーションがほとんどだ。サービスの仕組みは会社によってかなり異なり、手荷物などのオプションがほぼ別料金になる会社もあれば、大手航空会社と似たようなオプション条件を提供する会社もある。また、本来コスト削減のためインターネット直販を原則とするが、英語でのネット販売にまだ不慣れな人が多い日本の場合、旅行会社を介在させるLCCも多い。例えば、JTB、HISなどの大手旅行会社とのタイアップがあり、パッケージツアーに組み込んだりしている。また、JTBのトラベルサイトでは、ジェットスターとの連携で航空券とホテルを自由に組み合わせるダイナミックパッケージを販売しているほか、阪急交通社やHISなども同様な動きを見せている。日本におけるLCCの営業は、他国と違ってかなり柔軟性が必要とされ、例えば、パッケージツアーに組み込む場合、キャンセル料金や預け荷物などについて厳格なLCC規約の修正が求められる。利用者に関しては、訪日外国人のインバウンド面では顕著な伸びが見られるが、半面、トータルなアウトバウンド(日本人の海外旅行)では、大きなシェアを示していない(→「ツーウェイツーリズム」)。これは最安値の時期以外は、LCCより通常の航空便によるスケルトン型パッケージツアーの方が、安価に安心して旅行できる場合が少なくないことも影響しているだろう。今後はさらなる周知宣伝が必要であると同時に、時期による価格設定が重要となる。