政党は、特定の政策や原理に基づき政権を争う集団であり、首都の中央議会を中心に全国政党となるのが自然な動きである。しかし地方の利益が中央に対する要求を強め、中央政党を改造していった事例は各国の政党史によく見られることである。19世紀イングランド北部の工業地帯が、古くからの自由党を中央の革新政党に変えたり、あるいは労働党という新しい政党を生み出したりしたのは、その一例である。戦後日本の場合、中央ではイギリス流の議院内閣制、地方ではアメリカ流の大統領制になっており、中央の党の結束が弱く、首相が弱体化し、短命政権になりやすいのに対して、地方自治体の首長は地方議会に抗しても指導力を発揮し、中央政権に対して身近な住民の利益に訴えて、いわゆるポピュリスト的な政治を展開する。1970年代の東京と大阪に現れた革新自治体、あるいは東京の青島幸男、大阪の横山ノック、近くは宮崎の東国原英夫などのタレント知事などがその実例であった。近年では、河村たかし名古屋市長が市民税の削減を、大阪の橋下徹市長が大阪都構想を唱えて耳目を集めた。大阪では府議会も含めた「維新の会」という地域政党が生まれ、2012年2月に「船中八策」なる綱領を発表した。八策の中には参議院廃止や首相公選など憲法改正や中央議会での法案可決が必要な事項が含まれており、次の国政選挙にそれを支持する立候補者を募る動きに出たこと、石原慎太郎都知事が同調の気配を示したことなどから、中央の政治への波紋の広がりが予想されることになった。