議員のイニシアチブによる議員提出法案の形式での立法が議員立法。国会は官僚が作る政府法案(内閣提出法案)の通過機関となっているとして、議員立法の活性化を求める声は強く、1996年8月に土井たか子衆議院議長と鯨岡兵輔副議長は連名で「議員立法の活性化についての指針」を発表し、そのためのスタッフの強化等を訴えた。議院内閣制では、政府法案が中心となるのは当然だが、最近は臓器移植法、被災者生活再建支援法、児童買春等処罰法、ストーカー規制法、やみ金融規制法など、注目すべき議員立法も成立している。第159回国会(2004年)では、与党の自由民主党(自民党)議員の提出する法案が増加したことも注目された。第1次安倍晋三内閣下の07年5月に成立した憲法改正国民投票法は、与党の自民党と公明党は内閣提出の意向だったが、野党の民主党に譲って議員立法になった。議員立法と言っても、官僚機構が介入し、政府法案と実質変わらないものもあるが、中山太郎議員の熱意によって成立にこぎつけた臓器移植法など本来の議員立法に値するものもある。09年の総選挙で民主党を中心とする政権が成立した後、同党は政策を政府に一元化する立場から、法案は原則として政府法案に限り、選挙や国会など政治にかかわる法案を除き、所属議員による議員立法は原則禁止とすることとした。しかし党内には不満も強く、10年に党の「議員立法調整チーム」と政府の「政府内調整チーム」で調整を図ったうえで議員立法を行う手続きが定められた。その後は10年の参議院選挙後のねじれ国会により、与野党協議の結果議員立法として成立させる法案が増え、民主党内の「議員立法調整チーム」も廃止された。12年に政権が自民党と公明党の連立に戻った直後は、安倍首相の主導力が強かったこともあり、政府法案優位だったが、その後徐々に与党による立法も増える傾向がみられる。