参議院(参院)は、衆議院(衆院)のように内閣の信任・不信任権(→「内閣の信任・不信任決議」)を有しないが、一般的な決議権限の行使として、首相その他の大臣を問責する決議を行うことがある。制度的なものでないため、問責の意味、内容、効果は明確でないが、参院として首相等の責任を問うものと理解されている。内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うとの憲法規定が根拠となるとの議論もあるが、行政権の行使と無関係な理由で問責された大臣もおり、政治的性格の強い行為と言える。衆院の信任・不信任決議は内閣が対象だが、問責決議は、政治家個人を対象としており、したがって首相問責も首相個人の問責である(ただし、それによって首相が辞めれば、憲法の規定により内閣は総辞職することになる)。参院でこれまで首相その他の大臣に対する問責決議案が可決されたのは10件。1998年に初めて額賀福志郎防衛庁長官に対して可決されたときは、長官は次の国会召集前に辞任した。ねじれ国会となった後、2008年に福田康夫首相に対して可決されたときは、翌日衆院が内閣信任決議案を可決して対抗。その後間もなく国会は閉会し、閉会中に福田首相は総辞職の意向を表明した。問責決議が効果があったかどうかは不明である。また09年に麻生太郎首相に対して可決されたときには、1週間後に衆院が解散されたが、解散の日取りは事前に決まっていて、野党が対決姿勢を鮮明にするために提出・可決したもので、問責決議が解散をもたらしたとは言えない。その後09年の総選挙で民主党を中心とする政権に政権交代した後、10年の参院選挙で民主党が大敗し、与党が参院で過半数を割る逆のねじれ国会となって菅直人内閣で2件、野田佳彦内閣で野田首相本人に対するものを含め5件が可決された。首相本人に対するもの以外は、両内閣とも、時間を置いて内閣改造により問責を受けた大臣を交代させた。野田首相に対する問責決議の場合は、79日後に衆院を解散しているが、しかし問責後に臨時国会を支障なく召集しており、また参院自身がその臨時国会で野田首相に緊急質問を行っており、少なくとも問責決議が政権の存立にかかわる制度的効果をもったとは言えない。憲法では、政権の進退を決めるのは衆院であり、参院の問責決議が内閣の死命を制することには異論も多い。ねじれ国会は13年の参院選挙で解消されたが、制度上今後も生ずる可能性があるので、問責決議のあり方や効力について、国民や各党間の合意を形成しておく必要がある。