衆議院(衆院)と参議院(参院)は議員で組織されるから、審議の過程で発言するのも議員が原則で、他には議席をもたない国務大臣についても憲法で発言が保証されており、したがって国会内で発言するのは議員および大臣に限られると考えるのが普通である。しかし実際には、委員会では議員の質疑に対して官僚が答弁するケースが見られる。政府委員制度があった時代には、官僚の答弁は普通だったが、政府委員制度の廃止後も、政府特別補佐人(人事院総裁、内閣法制局長官、公正取引委員会委員長、公害等調整委員会委員長)および政府参考人(委員会の求めにより、行政に関する細目的または技術的事項について説明を行う各府省の局長・審議官級の官僚)が答弁を行っている。これに対して2009年の政権交代後、民主党の小沢一郎幹事長は、国会は議員どうしの議論の場であるべきだとして、政府特別補佐人からの内閣法制局長官の除外と政府参考人制度の廃止を主張し、そのための国会法と議院規則の改正を推進した。これに対しては、政府の憲法解釈の一貫性の確保のための内閣法制局長官の答弁や、行政の細部についての官僚の答弁は必要だとする意見も根強かった。小沢一郎が幹事長職を去った後も民主党政権では内閣法制局長官の答弁を抑制していたが、野田佳彦内閣になって12年の通常国会からこれを復活させ、その後の自公政権でも引き継がれている。なお、政治家の答弁についても、「大臣の答弁は、官僚答弁に終始した」など、官僚が行う答弁と同様に言質を取られないことを主眼にして、政治家としての見識が感じられない答弁を比喩(ひゆ)的に官僚答弁と言うことがある。