独立行政法人には、天下り凍結の対象外で、給与水準の公表も不要で、事業費から給与が出て、人件費削減の対象にもなっていない、天下りOBの嘱託職員がいる。これを「隠れ天下り」という。民主党は2009年8月の総選挙でのマニフェストで「天下り、渡りの斡旋(あっせん)の全面的禁止」と、「国家公務員の総人件費2割削減」を約束。11月の行政刷新会議の事業仕分け作業では、公益法人や独立行政法人に多くの官僚OBが再就職し、ため込んだ基金などが人件費や非効率な事業に使われてきた実態が明るみに出た。総務省は09年12月4日、各府省から理事長など役員への再就職が5代以上続いている独立行政法人・特殊法人(特殊会社)・公益法人について、09年5月時点では計338法人の422ポスト(総計2110人)に上ると発表した。うち125人は、各府省からの天下りと確認されたという。調査は各府省の自己申告に基づくため、天下りによる再就職が125人にとどまるのかは不明。調査は、独立行政法人など約7000の法人について、理事長や会長、専務理事、常務理事など役員への国家公務員の再就職状況を対象とした。その結果、現職の役員69人、過去職の56人が天下りと認定された。特に、「財団法人ゆうちょ財団」(郵便貯金振興会および財団法人郵便貯金振興会時代も含む)は、郵政事務次官や総務事務次官が5代にわたり、理事長に天下りしていた。各府省別では、国土交通省が最も多く40人、次いで、総務省28人、農水省24人、財務省8人、公正取引委員会、防衛省が各5人、警察庁4人となっていた。また、09年12月8日に総務省が公表した年収1000万円以上の嘱託職員は、厚生労働、文部科学、総務の3省で7法人11人が本省斡旋であった。これ以外にも、将来の天下りを前提にした片道切符の「出向」や、非常勤の雇用も隠れているといわれる。先に天下った官僚OBが後輩を呼び寄せてポストを譲る「裏ルート」もあるといわれ、天下り先になっている公益法人自体の整理が課題になっている。