内閣の補助部局として法律問題について内閣や各大臣に対して助言を与える内閣直属の機関。内閣法制局は、(1)法令の適用や解釈について内閣や各省庁で疑義が生じたときに内閣や総理大臣・各省大臣に意見を述べたり、あるいは、法律問題に関して国会において関係諸大臣の答弁に不一致が生じたときなどに、政府統一見解を作成する際に中心的な役割を演じる。また、(2)各省庁などが国会に提出する予定の法律案・条約案、あるいは閣議に提出する予定の政令案の原案に対して事前にその形式と内容について質疑応答方式により審査を行う。この審査を通過して初めてこれら法令案や条約案が閣議に諮られることになり、閣議では内閣法制局長官がそれらについて説明するのが慣例である。内閣法制局はこれに応じて(1)を担当する第1部(意見部)、(2)を担当する第2部から第4部(審査部)、そして、長官総務室から構成されている。
内閣法制局長官は、自民党政権では国会に出席させ、意見を述べさせていた。国会法では、議長の許可を得たうえで、政府が法制局長官や人事院総裁ら4人を政府特別補佐人として国会に出席させることができると規定しているからである。しかし、政治主導を唱え、官僚が公の場で意見を開陳することを認めない民主党政権は、2010年の通常国会から内閣法制局長官を政府特別補佐人とはしない、すなわち、国会には出席させないこととした。これについて、鳩山由紀夫首相は、「法制局長官に憲法の判断を委ねるということではなくて、そのことも含めて政治家が国家のあり方に責任を持つべきだ」と述べている。ただ、1月21日の衆議院予算委員会で、自民党の谷垣禎一総裁が09年12月の天皇陛下と中国の習近平国家副主席の特例会見に関連し、国事行為と公的行為の違いをただしたが、平野博文官房長官は即答できず、その後、しばらくしてメモをもとに回答した。官僚答弁の禁止を掲げて内閣法制局長官を出席させていなかったことが裏目に出た形となったといわれた。こうしたことも踏まえ、野田内閣は12年の通常国会から内閣法制局長官をふたたび政府特別補佐人とすることとなった。民主党政権に代った自民党政権の国会においてもこれが踏襲されている。