北朝鮮核開発問題で、2007年2月の6者協議での合意(→「初期段階合意」)に基づき、05年9月の6者協議共同声明を履行するための初歩的措置。「初期段階合意」に従って、07年3月上旬のニューヨークでの米朝国交正常化の作業部会に続いて、第6回6者協議第1セッション(同年3月19日~22日、北京)が開催された。しかし、北朝鮮はBDA(バンコ・デルタ・アジア→「資金洗浄問題」)の資金に対する「金融制裁」の全面的解除を、「初期段階合意」の履行の前提に位置づけていた。北朝鮮が「初期段階合意」の履行のために具体的な行動をとったのは、6者協議のアメリカ側首席代表のヒル国務次官補が平壌を訪問し、「初期段階措置」の履行がBDA問題の解決を前提とすることに合意をみてからであった。6月25日、北朝鮮外務省代弁人が「金融制裁」の問題が「ついに解決した」として、「行動対行動」の原則に従って「初期段階合意」を履行するとした上で、7月に寧辺の核施設の停止を発表し、国際原子力機関(IAEA)もそれを確認した。本来、「初期段階合意」では、これらの措置はそれ以降60日以内にとられるはずだったが、BDA問題により大幅に遅れる形となった。また、「初期段階合意」では、6者協議共同声明でいう「すべての核計画」の一覧表について、北朝鮮が5者と協議することが盛り込まれていた。アメリカはここでいう「すべての核計画」には、明記された使用済み核燃料から抽出されたプルトニウムだけではなく、高濃縮ウラン計画も含むと解釈していた。しかし結局は、北朝鮮が寧辺の核施設を停止し、IAEA要員がそれを監視した段階で、韓国が重油5万トンを北朝鮮に搬出し、「初期段階措置」は事実上完了したと見なされた。