少子化は、韓国などの新興工業国を含む先進工業国共通の現象であるが、その中で出生率が人口置き換え水準を少し下回る(女性1人当たり子ども数1.5~2.0人)「緩少子化」の国がある一方、大きく下回る(同1.5人未満)「超少子化」の国がある。少子化である限り、遅かれ早かれ人口は際限なく減ってゆくが、緩少子化であれば人口減少は比較的緩やかなものとなる。両グループは地理的に明瞭に分かれており、超少子化の国は、スペイン、イタリアなど南ヨーロッパ、ドイツから東ヨーロッパ、ロシアに及ぶ国々、そして日本、韓国である。すなわち、ユーラシア大陸の西端から東端まで一続きの帯をなしている。しかもこの帯は、台湾、香港、シンガポールとさらに南へと延びている。これに対して、緩少子化の国は、スウェーデン、デンマークなど北ヨーロッパから、イギリス、フランスなど西ヨーロッパにかけての国々、そしていわゆる新大陸の先進諸国のアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアなどである。このようなパターンがみられることから、少子化の要因として文化的・歴史的背景があると思われ、それを探ることの重要性を示唆する。また、緩少子化国はこれまで合計特殊出生率が持続して1.5を下回ったことがなく、一方いったん超少子化に陥ったほとんどの国では1.5以上への回復が見られないことも、双方の違いと対策を考える上で重要である。日本の合計特殊出生率は、1995年以後1.5を下回ったままである。