細菌感染やウイルス感染が、がんの2割近い原因になっている。胃のヘリコバクター・ピロリ感染は、慢性萎縮性胃炎を介して胃がんの素地となる。日本人のピロリ菌保菌率は非常に高く、30歳代から急増し、50歳代では70%を超える。胃がん患者の保菌率はやや高く、陰性者に対するオッズ比は20歳代で22、30~40歳代が7前後、50歳代以上は2前後となる。DNAウイルスの中では、EBウイルス(EBV)、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)などがヒトにがんを起こす。EBウイルスはバーキットリンパ腫以外にも、臓器移植後やエイズに合併するリンパ腫に関係し、上咽頭がんや胃がんとの関係も疑われている。B型肝炎ウイルスは、乳児期に感染しやすい。保因者となると肝臓がんの原因になりやすい。また、ヒトパピローマウイルスは、一定のサブタイプが子宮頸部がんや皮膚がんを起こす。RNAウイルスでヒトにがんを起こすものには、HTLV-1(human T-lymphotropic virus type 1)とC型肝炎ウイルス(HCV)とがある。また、風土的に日本住血吸虫による胆道がんやエジプトのビルハルツ原虫による膀胱がんなど寄生虫感染による発がんも認められる。