遺伝的がんはゲノム維持機構の欠失が関係する。がん抑制遺伝子のRb異常によって、子どもにできる網膜芽腫、同じくがん抑制遺伝子のAPCの異常によっておきる家族性大腸ポリポーシス、紫外線によるDNA傷害を修復できず日光に当たる部位が皮膚がんになる色素性乾皮症などがある。家族性大腸ポリポーシスは大腸に何百何千ものポリープができ、それが40歳ころまでに100%がんになる。腺腫からがんになるまでに数段階の遺伝子変化が起きているが、がん抑制遺伝子であるAPC遺伝子異常のあることが多い。p53遺伝子に一定の突然変異があると、家系内に乳がんや白血病、脳腫瘍や横紋筋肉腫、骨肉腫など多臓器にがんを起こすことが多く、リー・フラオメニ症候群と呼ばれる。遺伝子の不安定性(genetic instability)をもつ家系の人は、がんが多くなる場合がある。特定のCYP遺伝子多型性も発がんのリスクが高くなる場合があり、このような家族は家系内集積性を示す場合がある。